秋田大学大学院内分泌・代謝・老年内科学の福岡勇樹氏らの研究グループの検討により、従来から糖尿病患者は「サルコペニア」という状態(後で説明します)になりやすいと言われていました。

そのリスクは健常者の3倍以上とかなり高く、そこに高齢などの要因が上がると更にリスクが上がると言われています。

今回、その高齢者の中でも特にリスクが高いグループとして、肥満度が低いやせ型の高齢者のグループと体脂肪が高い高齢者のグループであることを突き止めることに成功したとのことです。

そして、海外の医学雑誌「Journal of Diabetes Investigation」8月11日オンライン版に掲載されました。

このニュースについて噛み砕いて説明してみたいと思います。

高齢糖尿病患者のサルコペニア

サルコペニアとは?

サルコペニアという言葉は造語です。

  • sarco(サルコ)=筋肉
  • penia(ぺニア)=喪失

加齢による筋肉の量が低下した状態を言います。

その歴史は比較的浅く、1989年にRosenbergによって『骨格筋量の加齢による減少』『サルコペニア』と定義されました。

2010年には、高齢者のサルコペニアに関する欧州のワーキンググループ(EWGSOP)が、筋肉量の減少と筋機能の低下(筋力低下あるいは身体機能低下)の両方の存在をサルコペニアと診断し、筋肉の量以外にも機能に注目するようになりました。

そして、それらによって定義されたサルコペニア状態になった症例は運動障害や転倒、骨折のリスクが増大します。

それにサルコペニアによる日常生活動作能力の低下なども挙げられています。

近年少子高齢化で、サルコペニアの有病者も増加していることから、予防すべきリスク因子を特定でた意義は大きいと感じます。


ここまでのまとめ

  • サルコペニア=筋肉量が低下(喪失)した状態
  • 運動障害・転倒、骨折などのリスクが増大
  • 日常生活動作能力の低下

実施した調査

調査対象

2015年2月~7月の約半年の間に、秋田大学の大学病院の糖尿病・内分泌内科/老年内科を外来で受診した65歳以上の糖尿病患者267名を対象としたものです。

大学病院という、受診者が多くて条件をクリアした症例を集めるのに適した施設である点で実施できた意義は大きいと思います。

通常であれば、他の施設と共同あるいは少ない症例で行うことになり、条件をそろえても各施設ごとに手法が異なったり施設スタッフの考え方によって調査が統一できないなどネガティブな条件になりますし、小さな施設での調査では症例数が少なく調査結果に疑義が生じかねません。

そういった意味で、大学病院での大規模調査ができたのはより均一な条件で調査ができた点で興味深い結果を得られたといえます。


調査対象のまとめ

  • 65歳以上の糖尿病患者267名
  • 大学病院で受診者が多いので意義がある

調査方法

調査方法は握力、歩行速度、四肢の骨格筋量指標を用いて、アジアのサルコペニアに関するワーキンググループ(AWGS)による診断基準で評価したものです。

海外ではヨーロッパのワーキンググループ(European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP))の評価で行う場合もありますが、AWGSによる評価の方がより日常の臨床から行えるものであることからAWGSの方式を採用した可能性があります。

また、生体インピーダンス法という体内に微弱な電流を流し、その電気的インピーダンスを利用して水分量や体脂肪、筋肉量を間接的に求める方法で身体組成を測定し、BMIや四肢骨格筋量や体脂肪率を算出したとのことです。

この装置は、大学病院にしか置いていないという装置ではなく、ごく簡易的なものであれば浴室の脱衣場に置いてある体脂肪が測れる体重計と似た装置になります。

もちろん、医療施設用の厳密なものを使用していると思いますが、短時間で数値を得ることができ、多くの症例を計測するのに適した選択だと考えます。

これら臨床でも行える迅速かつ正確で簡易的な方法を用いて調査したことが分かりました。


調査方法のまとめ

  • サルコペニアのワーキンググループ(AWGS)による診断基準
  • 生体インピーダンス法でBMI・水分量・体脂肪・筋肉量・四肢骨格筋量を算出

結果について

BMIを全体で4グループに分けてサルコペニアの有病率を調査しました。

その結果、男女ともにBMIが低いグループほど、サルコペニアになっていることが多かったとの結果を得ました。

同じく、体脂肪率も4グループに分けて比較したところ、男女とも体脂肪率が2番目に高いグループ(男性では25.3~30.2%、女性では33.1~38.7%)でサルコペニアの有病率は最も低い結果を得たとのことです。

つまり、体脂肪は「やや高め」がサルコペニアになりにくいという結果です。

逆に、1番脂肪率の高いグループは、かえってサルコペニアになりやすいという結果も同時に得たことから、高い体脂肪率はサルコペニアのリスクが高いといえます。

  • BMIが低い
    ⇒サルコペニアになりやすい
  • 体脂肪率が2番目に高い(男性:25.3~30.2%、女性:33.1~38.7%)
    ⇒サルコペニアになりにくい
  • 体脂肪率が1番目に高い
    ⇒サルコペニアになりやすい

多重ロジスティック回帰分析

多重ロジスティック回帰分析という、いくつかの条件が重なるとサルコペニアになりやすいという統計分析も行いました。

その結果、

男性

男性の場合、低いBMIとメトホルミン(糖尿病の治療薬)を使用していないことに骨ミネラル量の低下(カルシウムなどが少なくなっている状態)が重なると、サルコペニアになりやすい。

女性

女性の場合、骨ミネラル量の低下と血清アルブミン値の低下(血液の中のたんぱく質の不足)に加齢が重なるとなりやすい。

統計分析の意義

単純な条件だけを比較せず、統計分析を用いての調査も併せて行った点は、大きな結果です。

二つの事実が分かった時点で結果の分析を止めてしまいがちですが、統計的な分析を更に行い、真実を突き止めようとした点は優れた点です。

Journal of Diabetes Investigationとは

アジア糖尿病学会(AASDと呼ばれるアジア17ヵ国20団体が参加) の英文機関誌です。

アジアに限られた学会誌ではありますが、アジアの医療技術や研究成果の発展は著しいため、今後ますます発展していき将来的には欧米の科学誌にも迫るポテンシャルを秘めていると思います。

福岡勇樹氏

秋田大学大学院内分泌・代謝・老年内科学講座に所属する医員(大学病院に勤務し、外来や病棟などで診療を行う医師)です。

研究の傍ら、臨床にも深く携われたことから、今回の研究をすることができたのかもしれません。

まとめ

秋田大学の研究結果により、サルコペニアのリスク因子として「低BMI」の方と「高体脂肪率」の方、つまり極端なやせ型と肥満型の方にリスクが高いことが示唆されました。

今後この研究結果が行かされることを期待したいところです。

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